建物を見守り生かしていく

建物は風雨・地震など自然の脅威から「人」を守り、安らぎや活動の場を作り出す目的で建てられます。

しかし、近年建物や設備の老朽化そして点検や管理の欠如や認識不足などといった要因に起因する事故が多発しています。

記憶に残るものでも、トンネルの天井落下事故、老人福祉施設や簡易宿泊所の火事、地震によるブロック塀の倒壊などいたましい事故が思い浮かびます。

いずれも、点検や管理、適切な修繕などを施していれば防げたことであったと思われます。

また、そこには建物の計画時にそれをどう作るかやコストに目が行ってしまい、完成し利用し始めた後の維持管理を総合的に長期的に見守っていこうという思いや認識の希薄さや、人手不足、維持管理を支える技術者の不足、管理についての情報不足や経済的要因などが背景としてあります。

建物が生まれて使われなくなるまでのコスト、いわゆる企画から設計や建設費用と、その後の維持、保守点検、修繕などの費用の割合はおおよそ2:8といわれています。

思いを込めて作った愛着のある建物を、社会に対しに有意義にそしてできるだけ長く役立て行きたいものです。

建築基準法には建物を作るための法律ばかりではなく、完成した建物の管理者に対し「大勢の人が集まり寝泊まりする建物は点検を行い行政に報告する義務」があることが記されています。

人間でいえば健康診断のように、体の状態を調べどう健康に過ごしていけるかという予防医学の観点で建物を見守り、あるいは社会的ニーズに応える「新たな命を与えるリノベーション」という考え方を取り入れ、現在ある建物を最大限に生かしていくことが大切ではないかと考えています。

関連記事

PAGE TOP